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常同運動障害

F98.4 常同運動障害

Stereotyped movement disorders

常同運動症/常同運動障害

Stereotyped movement disorders

 

疾患の具体例

2歳、男児。1歳を過ぎた頃から、頭を前後に激しく揺すったり、上半身をゆらゆらさせたりするようになりました。親は「小さな子どもの癖のようなものだろう」と様子をみていましたが、自分で壁に頭を打ちつけるようになり、心配しています。流血したこともあります。近所の小児科に相談すると、大きな病院を紹介されました。

 

特徴

「常同運動障害」は、何かに駆り立てられているように目的のない行動を繰り返す障害です。行動のレパートリーは様々で、身体や頭を揺すったり、両手をバタバタさせたり、手を叩いたり指をはじいたりすることなどが挙げられます。あるいは、繰り返して頭を打ちつけたり、顔を叩いたり、目を突いたり、手や唇など身体部分を噛むといった自傷行動が伴うケースもあります。目を突く行動は、視覚障害のある子どもにしょっちゅう起こります。複数の行動を組み合わせる場合もあります。

こうした常同運動は、1日のうちに何度も起こるものから、数週間に1度のものもあります。数秒〜数分、またはそれ以上続くこともあります。なにかに没頭しているときや、興奮しているとき、ストレスを感じたり疲れたりしているときなどによく起こります。逆に、退屈なときに起こりやすいこともあります。いずれにしても、状況によって常同運動の現れ方は変わります。

また、常同行動を自分で止められる場合と、止められない場合とがあります。通常通りに発達している子どもは、この運動に注意を向けたり、気持ちをそらしたりすることで止められることがあります。神経発達症のある子どもは、こうした努力で運動を止めることがあまりできません。

 

有病率

身体を揺するなど単純な常同運動は、通常通りに発達している子どもにもよくみられます。複雑な常同運動の発生頻度は3〜4%と非常に少数です。知的能力障害のある人の4〜16%は、常同行動に自傷が伴います。その危険性は、知的能力障害が重度の人ほど高くなります。施設で暮らす知的能力障害の人のうち、10〜15%に自傷を伴う常同行動があります。

 

経過

常同運動は、典型的には3歳までに始まります。単純な常同運動は乳幼児期によくみられ、運動を抑えることの習得に関わっているかもしれません。複雑な常同運動のある子どもは、約80%が生後24ヵ月以前、12%が生後24〜35ヵ月、8%が生後36ヵ月以降に症状が現れます。通常通りに発達している子どもは、ほとんどの場合、時間が経つにつれて常同運動が起こらなくなります。知的能力障害のある子どもは、自傷の方法などは変わるかもしれないものの、常同的な自傷行動は何年も続くかもしれません。

 

原因

環境要因

社会的な孤立は、繰り返す自傷を伴う常同行動に発展する可能性があります。環境的ストレスや恐怖も、常同行動の原因になるかもしれません。

遺伝要因と生理学的要因

認知機能の低さは、常同運動を起こす危険性と関連しています。中等度以上の知的能力障害のある人は、常同運動がより多くみられます。

何度も繰り返す自傷は、神経遺伝的症候群によるものかもしれません。例えば、レッシュ−ナイハン症候群では、常同的なジストニア運動(身体がよじれるなど)があり、行動を抑制されなければ自分で指を切断する、唇を噛むなどの自傷を行う場合があります。レット症候群や、コルネリア・デ・ランゲ症候群では、手を口に入れる常同行為によって自傷するかもしれません。

 

治療

もっとも有効な治療は、行動療法と薬物療法、および両方の組み合わせです。ドパミン拮抗物質は、常同運動や自傷行動の薬物治療でもっとも一般的に使われています。フェノチアジン系は、もっとも高頻度に使われています。アヘン拮抗薬は、一部の患者の自傷行動を減少させます。

 

診断基準:ICD-10

記載なし

 

診断基準:DSM-5

A. 反復し、駆り立てられるように見え、かつ外見上無目的な運動行動(例:手を震わせるまたは振って合図する、身体を揺する、頭を打ちつける、自分の身体を噛む、自分の身体を叩く)

B. この反復性の運動行動によって、社会的、学業的、または他の活動が障害され、自傷を起こすこともある。

C. 発症は発達期早期である。

D. この反復性の運動行動は、物質や神経疾患の生理学的作用によるものではなく、他の神経発達症や精神疾患[例:抜毛症、強迫症]ではうまく説明されない。

該当すれば特定せよ

自傷行動を伴う (予防手段を講じなければ自傷に結び付くであろう行動を含む)

自傷行動を伴わない。

該当すれば特定せよ

関連する既知の医学的または遺伝学的疾患、神経発達症、または環境要因[例:レッシュ−ナイハン症候群、知的能力障害(知的発達症)、子宮内でのアルコール曝露]

現在の重症度を特定せよ

軽度:症状は、感覚的な刺激や気晴らしによって容易に抑制される。

中等度:症状は、明確な保護的手段や行動の修正を要する。

重度:重大な自傷を防ぐために、持続的な監視と保護的手段が必要となる。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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