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表出性言語障害

F80.1 表出性言語障害

Expressive language disorder

 

疾患の具体例

4歳、女児。同年齢のほかの子どもに比べて言葉が遅く、短い言い回しでしか話すことができません。新しい言葉を教えても覚えられないようで、「あれ」「これ」と言ったり、ジェスチャーで示したりしながら、コミュニケーションをとります。目の前の人が誰であるか、そこにある物が何をする道具かは理解しているようですが、言葉が出てきません。周囲の輪から外れることも多く、幼稚園で1人さみしそうにしていることがあります。医師からは「表出性言語障害」と診断され、言語療法を受けながら、学齢期になるまで様子をみることを勧められました。

 

特徴

言語障害には、表出技能(言語の使用)の欠陥と、受容技能(言語の理解)の欠陥の2種類があります。このうちの表出性言語障害は、正しく言葉を理解しているにもかかわらず、言葉を使う能力が精神年齢に即した水準を下回る障害です。語彙が乏しく、複雑な文章の作成や言葉の想起といった言語技能が、期待される水準より低下しています。

この障害をもつ子どもは、話をしていても漠然としていたり、特定の対象を名指す代わりに「あれ」「もの」といった代用語を多く使ったりします。自分が言いたいことをうまく説明できないために、仲間外れになったり、ストレスをため込んだりします。学齢期の子どもは、自己像の低さや欲求不満、抑うつを含む情緒的な問題を抱えるケースもあります。

また、重症の場合は、1つの単語を発したり、音を真似たりすることも難しく、「ママ」といった単純な言葉を使うこともできません。自分の欲求を伝える手段として、指で指したり、身振りを使ったりします。

 

経過

表出性言語障害の子どもの大半は、4歳までに短い言い回しで話せるようになりますが、新しい言語を覚えて保持することが難しいようです。文法的な構造も、同年齢に期待される水準よりも際立って低い状態にあります。 ただし、言葉の遅い子どもに関する複数の研究では、表出性言語障害の子どもの50〜80%は学齢期に達するまでに、通常通りの水準の言語技能を身につけるとしています。学齢期に達する前に平均に追い付いた子ども達のほとんどは、その後も言語の障害を示すことはありません。

回復の程度やスピードは、重症度や治療への動機付け、治療的介入の時宜を得た開始にかかっています。軽度の場合は、50%の子どもが言語障害の徴候を残すことなく自然に回復します。しかし重度の場合は、その後も軽度〜中等度の言語障害が残ることがあります。言葉の理解力が劣ったり、構音が悪かったり、学業成績が低かったりする症状は、7年後の追跡調査でも同じであるとされています。

 

治療

言語病理学者が言葉の理解について教える言語療法があります。行動を強化する訓練と、音素(音の単位)や語彙、構文の自習を通じて、言い回しの数を増やすことを目標としています。また、言語の専門家が保護者に治療的技法を教える方法も効果を上げています。言語障害児を育てる困難さに起因する家庭内の緊張を和らげたり、障害への気づきと理解を深めたりする効果があります。

障害が自尊心に影響を与えている子どもに対しては、精神療法を行う場合もあります。

 

原因

特定の原因はわかっていません。ただし、大脳の微細な損傷と、発達の遅れが基盤にあると考えられています。MRIを使ったある小規模な研究によると、脳の非対象が逆転している可能性が示されています。左利きと表出性言語障害は関連があるようだと考えられています。また、遺伝学的要因が関係している可能性もあります。いくつかの双生児研究では、一卵性双生児が双方とも発達上の言語障害をもつ割合は有意に高いとされています。ほかに、環境や教育上の要因も言語障害に影響していると考えられています。

 

診断基準:ICD-10

言語の発達は、正常でもかなりの個体差が認められるが、2歳までの単一語(あるいは語らしきもの)の欠如と、3歳までの単純な二語分の生成の欠如は、明らかな遅滞の徴候ととるべきである。それ以降では以下の障害が含まれる。ごく限られた語彙の発達、一般的な語の簡単な組み合わせの過度の使用、適切な語の選択の障害と語の代用。発語の短縮、未熟な文章構成、文章構成の誤り、とくに語尾と接頭辞の省略、前置詞、代名詞、冠詞、動詞と名詞の語尾変化のような文法的特徴の誤用や使用の欠如、また、文の流暢さが欠けたり、過去の出来事を述べる際に前後関係がわからなくなるような、規則の誤った過度な一般化が生じることがある。

話し言葉の障害はしばしば語音の産出の遅滞や異常を伴う。

診断は、精神年齢の正常範囲を超えた、重度の表出性言語の発達の遅滞がみられるが、しかし受容性言語能力は正常範囲内である(しばしば平均からいくらか下回ることもある)ときにのみくだすべきである。非言語的な手がかり(微笑やジェスチャーのような)、および想像遊びあるいはごっこ遊びに反映されるような「内」言語の使用は比較的保たれ、言葉を用いないで社会的に交流する能力は比較的障害されないでいなければならない。言語障害にもかかわらずコミュニケーションを求めようとし、実演、ジェスチャー、身振り、言葉でない発声によって言葉のなさを補おうとする傾向がある。しかしながら、とくに学齢期の小児では、交友関係の困難、情緒障害、行動上の混乱、および/または多動と不注意などが随伴することがまれではない。一部の症例では、言語の遅れを来すほど重大なものではないが、何らかの部分的な(しばしば選択的な)聴覚欠損が加わっていることもある。会話のやりとりの中で適切な関係をもてないこと、あるいはより全般的な環境の不十分さは、表出性言語の発達の障害の起源として大きなあるいは決定的な要因となることがある。こうした症例では、環境要因を適切なZコード(第XXI章)で記すべきである。障害は、正常な言語使用の明らかな長期の持続の期間がなく、乳児期からずっと明らかでなければならない。しかしながら、明らかに正常な2、3の単一語の使用がみられた後に、それが後退してしまったり、発達しなかったりすることはまれではない。

 

診断基準:DSM-5

記載なし

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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