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こころの病気のはなし > 専門編 > 急性一過性精神病性障害

急性一過性精神病性障害/短期精神病性障害

F23 急性一過性精神病性障害 Acute and transient psychotic disorders

短期精神病性障害 Brief Psychotic disorder

 

疾患の具体例

34歳女性、学生時代から交際してきた恋人に別れを告げられ、翌日から混乱状態に陥りました。会話をしていても頻繁に話題が脱線し、内容は支離滅裂です。周囲の人が自分をばかにしているように思えてならず、突然、激しく興奮して攻撃的な物言いをしたりすることもありました。そうかと思うと、黙って言葉を発することもできません。仕事にも行けなくなりました。心配した親友に医療機関の受診を勧められ、近所のクリニックに行ったところ「急性一過性精神病性障害」と診断されました。2週間ほど入院し、薬物治療を受けながら静養するうちに平常心を取り戻しました。

 

症 状

DSM-5で定義される「短期精神病性障害」は、妄想や幻覚、まとまりのない発言、緊張病など異常な精神運動行動が急激に発症する障害です。激しく感情が揺れ動いたり、混乱したりするのが典型的です。急性期症状の際には、自殺行為の危険が高いとも考えられています。しかし、症状が表れる期間は短いのが特徴です。

ICD-10では、短期精神病性障害と同様のケースを「急性一過性精神病性障害」と定義しています。この障害によくある特徴を、以下のように示しています。

(a)このグループ全体を決定づける特徴である急性発症(2週間以内)

平常時から精神病的症状へ、2週間以内に変化すること。

(b)典型的な症候群の存在

急速に多様な症状が表れる「多形性(polymorphic)」と呼ばれる状態があること。次に典型的統合失調症があること。

(c)関連する急性ストレスの存在

大部分の人にとってストレスだと見なされるような出来事。死別、配偶者や職を不意に失うこと、結婚、戦争、テロおよび拷問による心理的外傷など典型的なストレスがあること。長期間続く苦悩や困難は、ここでいうストレスに含めません。

 

特 徴

アメリカでは、短期精神病性障害が初発の精神病症例の9%を占めるとされます。女性の症例は男性より2倍多く見られているようです。発症年齢の平均は30代半ばですが、生涯を通じて発症する可能性があります。

 

原 因

病気になる前のパーソナリティ障害や、パーソナリティ特性(統合失調型パーソナリティ障害、境界型パーソナリティ障害、知覚調節異常など)は、急性一過性精神病性障害(短期精神病性障害)を発展させる素因になるかもしれません。

 

経 過

再発率は高いものの、ほとんどの人は予後が良好です。症状の持続期間は、1日以上1ヵ月未満で、最終的には病前の機能レベルまで完全に回復します。中には持続期間が2〜3日と極めて短い人もいます。残念なことに、早急な回復を望めない患者もわずかに存在しますが、早期に予見することは不可能だとされています。

 

治 療

[入院治療]

患者が急性に精神病状態に陥った際は、短期間の入院が必要なこともあります。静かな病院での療養や、薬物の効果が得られるまでの間、監視体制が必要になることも考えられます。

[薬物治療]

短期精神病性障害で考慮すべき薬物は、抗精神病薬とベンゾジアゼピン系の薬物です。前者を選択する際は、「ハロペリドール」などの効力価の薬物が使用されます。ただし、若年者など錐体外路系副作用の危険性が高い患者には、セロトニン-ドパミン拮抗薬の併用を考慮すべきとされています。ベンゾジアゼピン系薬物は、短期治療の目的で使用することができます。いずれの薬物も、長期投与は避けるべきとされています。

[精神療法]

入院や薬物の治療だけでなく、病気になった体験を患者と家族の間で理解しあうことが大事です。ストレスの原因と症状、患者自身の対処法などをについて話し合うことが目的とされます。治療に家族を関与させることが、治療成功へのカギとなるはずです。

 

診断基準:ICD-10

このグループの障害はいずれも、時折情動の変化や個々の感情障害の症状が顕著になることはあっても、躁病あるいはうつ病エピソードの基準を満たすことはない。これらの障害はまた脳震盪、せん妄あるいは認知症の状態のような器質性の原因が存在しないことからも定義される。困惑、放心状態、および即答すべき問いかけへの注意欠如をみることがしばしばあるが、もしそれが器質的原因によるせん妄や認知症を疑わせるほどに顕著で持続的であれば、検査や観察によってその点が明らかになるまで診断を保留すべきである。同様に、薬物あるいはアルコールによる明らかな中毒が存在する場合も、この障害の診断をくだしてはならない。しかしながら、たとえばアルコールあるいはマリファナ(大麻)の使用量が最近になって多少増えていても、重症の中毒や見当識の証拠がみられなければ、これらの急性精神病性障害の1つであるとの診断を除外してはならない。

48時間以内および2週間以内という診断基準について重要な点は、それらの障害が最も重症になった時間としてではなく、精神病性の症状が明らかになり、少なくとも日常生活や仕事上の場面に何らかの支障が出てきた時間として考えられていることがある。いずれの場合も、そのあとに障害の極期を迎えることがあるが、通常患者が何らかの援助機関や、医療機関と接触をもつようになったという意味で、症状や障害が所定の時間までに明らかになっていさえすればよい。不安、抑うつ、社会的引きこもり、あるいは軽度の異常行動といった前駆期を、これらの機関に含めるのは適切でない。

第5桁の数字を、急性精神病性障害が急性ストレスと関連しているかどうかを示すのに、用いることができる。

 

診断基準:DSM-5

A. 以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)が存在する。これらのうち少なくとも1つは(1)か(2)か(3)である。

  1. 妄想
  2. 幻覚
  3. まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)
  4. ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動

注:文化的に許容された反応様式であれば、その症状は含めないこと。

B. 障害のエピソードの持続期間は、少なくとも1日以上1ヵ月未満で、最終的には病前の機能レベルまで完全に回復すること。

C. その障害は、「うつ病または双極性障害、精神病性の特徴を伴う」、統合失調症または緊張病のような他の精神病性障害ではうまく説明されず、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。

該当があれば特定せよ

明らかなストレス因がある(短期反応精神病):その人の属する文化圏で同様の環境にあるほとんどすべての人にとって著しくストレスの強いような、単独あるいは複数の出来事に反応して症状が起こっている場合。

明らかなストレス因がない:その人の属する文化圏で同様の環境にあるほとんどすべての人にとって著しくストレスの強いような、単独あるいは複数の出来事に反応して症状が起こっていない場合。 周産期発症:発症が妊娠中もしくは分娩後4週間以内である場合。

該当があれば特定せよ

緊張病を伴う:短期精神病性障害に関連する緊張病のコードも追加で用いる。

現在の重症度を特定せよ

症度の評価は、精神病の主要症状の定量的評価により行われる。その症状には妄想、幻覚、まとまりのない発語、異常な精神運動行動、陰性症状が含まれる。それぞれの症状について、0(なし)から4(あり、重度)までの5段階で現在の重症度(直近7日間で最も重度)について評価する。

注:短期精神病性障害は、この重症度の特定用語を使用しなくても診断することができる。

 

※参考文献

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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