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健忘症候群

F1x.6 健忘症候群 Amnesic syndrome

 

疾患の具体例

52歳女性。若い頃から仕事一筋で、会社では責任のある地位を得ていました。一方で、忙しさのストレスから抑うつ状態になり、数年前から病院で睡眠薬と抗不安薬を処方されていました。つらいことがあると、大量のアルコールとともに薬を飲むこともあります。しばらくはそうしてしのいできたのですが、最近になって仕事のミスが増えました。顧客と会う約束を忘れたり、部下に同じ指示を何度も出したりするようになったのです。やがて業務に支障が出ることが増え、不安になって主治医に相談すると「健忘症候群」と診断されました。

 

症 状

主な症状は記憶障害です。ただ、一口に記憶と言ってもすべてを失うわけではありません。健忘症障害の中核症状は、新たな情報を学習しにくくなる「前方向性健忘」と、すでに学習したことを思い出しにくくなる「逆行性障害」です。特に、数分間の出来事を覚える「短期記憶」と、数時間〜数日のことを覚える「近似記憶」が障害されます。よくあるのが、人と約束していたことを忘れたり、ものをなくしたりすることです。あるいは、朝食や昼食に何を食べたか。病院の名前や担当医の名前を思い出せなくなって、異変に気付くケースがあります。

一方で、即時の想起能力は保たれていることが多いとも言われています。例えば、その場で6つの数字を繰り返して述べるテストなどは、問題なくクリアできるのです。また、何十年も前の幼少期の体験など、遠い過去の出来事は比較的よく覚えています。

いずれにしても、健忘症障害の症状によって、患者さんは仕事や家庭内での役割を果たせなくなるなど、社会的、職業的機能に影響を受けることがよくあります。そのため、自身の混乱を取り繕うために作り話をすることもあります。

なお、ここで挙げた以外の認知障害が見られる場合は、認知症やせん妄など、ほかの疾患として診断するほうが適切です。

 

原 因

健忘症障害は、脳のなかでも間脳(視床や正中核など)と中側頭葉(海馬、乳頭体、扁桃体など)が損傷されることが原因になります。これらの部位が、低血糖、低酸素症(一酸化炭素中毒を含む)などによって損傷されることで、健忘症障害が引き起こされます。また、単純ヘルペス脳炎は海馬に損傷を与えやすいため、注意が必要です。あるいは外傷、脳腫瘍、脳血管性疾患、外科的処置、多発性硬化症の病巣が影響を及ぼすこともあります。

さらに、多くの薬物が健忘症障害と関係しています。ベンゾジアゼピン系の薬は、睡眠薬や抗不安薬などとしてよく処方される薬ですが、健忘症障害を引き起こす可能性があると言われています。アルコールと併用された場合はなおさら、そのリスクが高まります。

往々にして、栄養欠乏症や脳腫瘍の場合は徐々に症状が表れます。それに対し、外傷や脳血管性障害、アルコールなどの神経毒性科学物質は突然発症することがあります。

 

特 徴

現在のところ、健忘症障害の発生率や有病率を示す十分な研究報告はありません。しかし、アルコール使用障害や頭部外傷の患者さんに、より多くみられる傾向があるとされています。医療機関では、アルコール使用障害による健忘症障害が減少し、頭部外傷に関連する健忘症障害が増加しているとも言われます。

 

治療・経過

元になっている疾患があれば、その治療を行います。改善するにつれて、記憶が失われている期間が徐々に短くなっていく場合もありますし、人によっては全期間の記憶が徐々に改善していきます。

 

診断基準:ICD-10

ここにコードされるアルコールあるいはほかの精神物質作用による健忘症候群は器質性健忘症候群の一般的な診断基準を満たさなければならない。この診断の基本的な条件は以下のとおりである。

  1. 短期記憶(新しい事柄の学習)の障害として示される記憶障害。時間感覚(出来事の時間経過にそった再配列、反復する出来事を1つであるとみなすこと、など)の障害。
  2. 即時の想起能力に欠陥がないこと。意識障害がないこと。広汎な認知障害がないこと。
  3. アルコールあるいは薬物の慢性的(そしてとくに大量の)使用の病歴あるいは客観的証拠。しばしば無感情と自発性欠如を伴ったパーソナリティの変化。さらに自己否認の傾向もまた存在することがあるが、これらを診断の必要条件とみなすべきではない。作話は顕著なこともあるが、この診断に必要な前提条件とみなすべきではない。

 

診断基準:DSM-5

記載なし

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

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