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心の病気の種類

解離性とん走

● 症状

とん走」とは、何かから逃れ走ることを意味します。「解離性とん走」は、行動や気持ちが普段の意識から切り離されてしまう「解離症」の一種です。突然、住み慣れた場所などから去って放浪し、過去の記憶(一部または全て)を思い出せなくなります。自分が誰だかわからなくなったり、別の人格の人間だと思い込んだりすることもあります。

とん走の行き先は、その人にとって意味のある場所かもしれません。遠い土地でまったく知らない人として生活しているのが見つかることもあります。

この障害は、とん走の症状があり、なおかつ薬物や他の病気が原因ではなく、社会生活を営む上で著しい苦悩をもたらすときに診断されます。アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル『DSM-5』では、「解離性健忘」に含まれるものとして位置づけられています。

 

WHOの診断ガイドライン『ICD-10』によると、解離性とん走の患者さんは、放浪中も食事や入浴など基本的な自己管理はできるとされています。知らない人とコミュニケーションをとって買い物をしたり、電車やタクシーに乗ったりもできるため、第三者の目には完全に正常な状態と映ることもあります。

とん走している期間は様々で、数分間〜数ヵ月間まで報告されています。通常は大人に現れる症状ですが、子どもや青年にも起こりえます。子どもや青年は大人より遠くに行けないため、とん走の期間も距離も短くなります。

 

とん走が終わると、患者さんは困惑、混乱、トランス状態のような行動、離人症(自分を傍観するような感覚)、現実感消失、転換症状(心理的なストレスが身体症状として現れること)などを体験することがあります。解離性健忘になってとん走を終える人もいます。

多くの人が回復しますが、難治性の解離性健忘のある患者さんはまれに持続します。また、解離性とん走をした人のほとんどは、とん走を繰り返すという報告もあります。解離が消えていくと、気分障害や強い自殺念慮、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や不安症にさいなまれることがあります。

 

● 他の病気との関係

解離性健忘との関係

解離性健忘は、心的外傷や強いストレスとなる出来事の記憶を失う(健忘)障害で、健忘と健忘の間に混乱した状態になります。それに対し解離性とん走は、混乱状態というより、現状から逃げ出したい一心で自宅や住み慣れた場所から走り去ります。解離性健忘のある人に、解離性とん走が生じることもあります。

 

解離性同一症との関係

解離性同一症は、かつて“多重人格障害”と呼ばれていたもので、自分の中に複数の人格が存在する障害です。解離性とん走は、解離性同一症のある人に生じることもあります。その場合は生涯を通じて繰り返されるかもしれません。

 

てんかんとの関係

てんかんは脳神経の疾患で、とん走がみられる場合があります。てんかん性とん走は、混乱したり、同じ言葉を何度も繰り返したり、あるいは異常な動きをすることがあります。

 

他の病気との関係

上記以外にも、放浪行動が起こる病気はいくつもあります。例えば、全身性身体疾患、中毒と物質関連障害、せん妄、認知障害、器質性健忘症候群などで、これらの放浪は解離性とん走との区別が難しいとされています。しかし、身体疾患や中毒、物質関連障害はこれまでの病歴を確認し、検査をすることによって、解離性とん走ではないことが判断できます。

また、双極性障害や躁病、統合失調症でも放浪や家出がみられることがあります。躁状態のため目的があって家出をする人は誇大的観念にとりつかれており、不適切な行動が注意を引きやすいことが特徴的です。統合失調症の場合は思考障害があり、歩き回っている間の出来事を聞いてもうまく話せません。解離性とん走では、こうした思考障害を示すことはありません。

 

● 原因

心的外傷となるような重大な出来事、例えば戦争、強姦、小児期の性的虐待、大規模な社会的変革、大震災などによって「そこから逃げ出したい」という気持ちが高まることが、解離性とん走の基底にある原因です。とん走をする直前には何もなくても、実は過去に強烈な体験があったというケースも報告されています。そうした例では、外的な危険や心的外傷の代わりに、もしくはそれらに加えて、激しい情動や衝動(圧倒されるような恐怖、罪悪感、羞恥心、または近親姦的性的衝動、自殺や暴力的衝動)などと格闘していることが多いとされています。

 

現時点で体系的なデータはありませんが、報告されている中では男性がほとんどで、従軍している時がもっとも多いそうです。重度のPTSDのある例では、とん走することによって悪夢から解放されることがあります。

 

● 治療

一般的に、解離性とん走の治療は精神療法が行われます。催眠療法や薬理療法を用いた面接が、記憶の回復を手助けすることもよくあります。多くの場合、解離性とん走に至らしめた問題をつきつめるうちに、症状が悪化します。とん走を起こす前の心的外傷やストレス環境が明らかになったら、自殺念慮や衝動的な行動に備え、必要に応じて精神科病院への入院をします。家族療法や公共機関の介入も必要となります。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

 

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