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心の病気の種類

解離性健忘

● 症状

解離性健忘の「解離」とは、特定の心理や行動が、普段の意識から切り離されてしまう状態を言います。大きなショックやストレスのかかることから精神を守るための、無意識的防御機制と定義されています。解離のともなう精神疾患「解離症」はいくつかあり、記憶、同一性(自我や人格)、知覚、意識、行動などのうち1つ、または複数に混乱がみられます。解離性健忘は、記憶が解離するタイプの解離症です。

解離性健忘の主な特徴は、心的外傷(戦争、天災、事故、犯罪、虐待といった強い精神的衝撃)や、強いストレスとなる出来事の記憶(数時間〜数日間の記憶)を思い出せなくなることです。薬物や他の病気、外傷などの影響ではなく、精神的な衝撃によって引き起こされます。

 

患者さんの多くは、記憶の喪失のほかにさまざまな症状を併発します。例えば、身体的な病気でもないのに腹痛や皮膚のかゆみなどが続く「身体化症状」、精神的ストレスが原因で歩くことなどが困難になる「転換症状」、自分で自分を傍観するような精神状態の「離人感」などが挙げられます。現実感喪失、トランス状態などを併発する場合もあります。

典型的ではありませんが、抑うつや気分の変動、物質乱用、睡眠障害、不安、パニック、自殺または自傷衝動や自傷行動、暴力的爆発、摂食上の問題、対人的問題などといったさまざまな症状が現れ、頻繁に医療機関にかかる患者さんもいます。健忘は、心的外傷になった記憶のフラッシュバックや再体験時に生じることもあります。

 

なお、解離性健忘は突然現れる場合と、徐々に現れる場合があります。一時的なこともあれば、慢性的なこともあります。有病率は一般人口の2〜6%の範囲で、男女差はみられません。青年期後期か成人に始まることが多いとされています。

 

● 他の病気との関係

日常的な物忘れ(病気ではない物忘れ)との違い

解離性健忘は、日常的な物忘れに比べて、記憶を失う範囲が甚だしく広範囲です。また、日常的な物忘れは心的外傷などストレスとなる出来事とは無関係に生じる点で、解離性健忘とは異なります。

 

認知症、せん妄、健忘性障害との違い

認知症、せん妄、健忘性障害で失われる記憶は、心的外傷となるような圧倒的な体験ではなく、日常的で雑多な体験です。また、これらの病気は記憶を失うだけでなく、認知、言語、注意、行動上の問題も広範囲に生じます。

 

一過性全健忘との違い

一過性全健忘は、新しい情報を覚えられなくなることが特徴です。記憶を失うことを自覚しており、繰り返し悩んだり、我慢したり、疑問に思ったりします。過去の記憶を思い出せないことが短期間続いたのち、速やかに本来の認知機能に戻ります。

 

解離性同一症との違い

解離性同一症(いわゆる多重人格症)の患者さんが、突然の健忘やとん走(突然、家出や失踪をする)を示すことがあります。ただし、解離性健忘が日常的にみられる患者さんは限られています。解離性同一症の健忘は、一過性の記憶喪失(ブラックアウト)の繰り返しだったり、とん走や説明不能な執着が伴ったりします。

 

● 原因

解離性健忘は、心的外傷や、強いストレスとなる出来事を体験したことが原因になります。特に、小児期の身体的、性的虐待や、暴力がある人間関係、心的外傷が重篤で頻回、暴力性が高い場合に生じやすいことがわかっています。信頼して必要としていた人からの裏切りで心的外傷を負ったことが原因になることもあります。あるいは、何らかの精神的葛藤や情動的なストレスを抱えていることで発症する人もいます。

 

● 治療

認知療法

認知療法は、心的外傷関連の障害に対し、特に有効な場合があります。心的外傷による認知のゆがみが特定できれば、失われた記憶を通常の記憶のなかに取り込む手段がみつかるかもしれません。

 

催眠療法

催眠状態での面接によって、失われた記憶を思い出せるようにする方法です。患者さんが自己催眠療法を学び、毎日の生活で落ち着きを得る技術として活用できるようになる場合もあります。

 

身体的療法

薬物療法は、薬による効果で面接を行いやすくする以外、あまり用いられません。使用する薬物には、アモバルビタールナトリウム(イソミタール)、チオペンタール(ラボナール)、経口ベンゾジアゼピン、アンフェタミンなどがあります。

 

集団精神療法

時間を区切って行う長期的な集団精神療法は、小児期の虐待を耐えた人に役立つことが報告されています。

 

なお、解離性健忘の経過についてはあまり知られていません。急性の場合は、心的外傷となる環境から安全なところに移ることで、自然に寛解することが多いとされています。症状が重い場合は慢性化する例もあると報告されています。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト 日本語版第3版』(メディカルサイエンスインターナショナル)

 

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